薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §22

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§22

 

KV下層部を抑圧するための上層部

KVの症状には次のようなものがある。
· トゥレット症候群 (チック症)
· 強迫性障害 (強迫行為)
· 衝動制御障害 (抜毛癖、爪咬癖、自傷性皮膚症、など)

神経症にはさまざまな種類があるが、下層部、即ち感情のポテンシャルエネルギーの蓄積は同じである。感情のポテンシャルエネルギーとは、いまだに不快感情として意識の中で表現されていない不快判断、不快判断の凍結状態である。凍結は零下の温度による凍結でもあり、またコンピューター用語のフリーズ(freeze)でもある。不快判断が表現されないのであるから、トラウマイメージは楽しいイメージである。
ポテンシャルな感情 = 未表現の不快判断
上層部の仕組み = KV
同じ下層部が原因で、すなわち同じ感情のかたまりの抑圧の手段として、チック症の症状が現れたり、強迫性障害の症状が現れたりする。

合理化には二種類ある。
(1)チック症上層部の中における運動チックの動作とその筋肉の任意な選択(肩か、眼か、など)、汚言症の単語の任意な選択。動作は必ず偽りの動機が伴う。任意とは、サイコロの目のように、どれでもよいという意味。
(2)KVの種類の任意な選択。すなわち、上層部の選択。(チック症か、強迫性障害か、など)。KVをもつ際には偽りの動機は伴わないが、その任意な選択は合理化と呼ぶ。完全に無意識なリビドーレベルの抑圧作業が身体的病的感覚および身体的病的動作の身体レベルの抑圧作業に変換されることを、合理化という語はここでは意味する。無意識の抑圧が絶対強迫の中の身体に合理化さる。合理化とは逸れた意識化を意味する。
上層部は下層部の抑圧手段であるから、合理化によってKVの種類が任意に選ばれる必要がある。上層部として、運動チック症、強迫性障害、汚言症、多動性障害などから精神的トラウマの内容に関係なく症状の種類が選ばれる。上層部にチック症と強迫性障害など、二つのKVをもっている人は神経症のひとつの下層部を共通要素としてもっているということ。チック症だけの人が、上層部の身体的感覚の意識化だけをして、下層部の治療、感情的カタルシスをしない場合は、チック症が強迫性障害などの別のKVに変わる可能性があると考えるのも論理的である。下層部の治療は必須。また、チック症だけの人が上層部と下層部を治療した場合は他の神経症にはならないとも言える。実際には、ひとりひとり症状の現れかたに違いがあるであろうが、ここでは図式的な理解が大切である。
下層部の感情のかたまりの中心的トラウマは、あるひとつの限定されたイメージであるから、そのイメージが解決された場合は神経症の治療の終了であり、抑圧の強い人でも再発は理論的にない。感情的カタルシスの後、抑圧の蓋の密閉性は弱まる。すなわち、抑圧の蓋は絶縁体であり、カタルシスにより患者の意識はこの絶縁体の存在を知るということ。近視の治療が眼鏡をかけることであるように、KVの治療は絶縁体の存在を知ること。

複数のトラウマイメージがマトリョーシカ人形のように、あるいは玉ネギのように入れ子構造なっている可能性がある。中心のトラウマイメージは、幼児期の不快判断が完璧に抑圧されたイメージで、その後の不快なイメージの内側に発見される。本来ならば、その幼児にとって不快であることが当たり前であるはずのイメージ。中心的トラウマは幼児期のトラウマであるから、患者にとって実感がなく、論理的にのみ推論される場合もある。また、幼児期のトラウマイメージは幼児の誤った判断であった可能性もあり、トラウマイメージは事実とは異なることがあるはず。その場合は、その誤った判断を論理的に推論する。
中心的トラウマに対し絶対に大爆発せずに一週間に一度、三秒だけのカタルシスを少しずつ行う。

アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムやADHD注意欠陥多動性障害の患者にしばしばチック症がみられるが、アスペルガー症候群やADHDは神経症ではない。(§39、§42)