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Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。
薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§09
チックの動作は随意運動である。
《身体的な絶対強迫》の理解
まず第一に精神分析医は患者に随意運動と不随意運動の神経学的な正しい定義を自分で調べさせる。小さな子供の患者には、精神分析医が随意運動と不随意運動の神経学的な正しい定義の理解を手伝う。随意運動と不随意運動の区別は神経学の基礎的知識のひとつであり、小さな子供にも容易に理解できるはずである。そのあとで、精神分析医はチックの動作が随意運動であるか、それとも不随意運動であるかを患者自身に考えさせる。無意識の抵抗が理解を妨害することが予期される。
肩チックと満員電車のパニック障害と数字5の強迫性障害と「xxxx」という語の汚言症は同じ一つの病気の症状であり、その病気とは神経症の絶対強迫に支配された KV の状態である。ノイローゼに関する知識のないセラピストは、その身体性を知らず、チック症をもつ子供を馬鹿な子供であると思い、しかしながら、チックの動作を不随意運動であると思い、薬の服用によってチックの動作を親が見ることがないようにする。
通常、随意運動の 99% が自動的になされているが、そのような無数の自動的な随意運動とは違い、チックの動作は極めて意識的な随意動作である。不随意運動とは、したくない運動のことではなく、動作が意志からまったく独立しているという意味である。その運動が一秒間でも止めていることができるものであるならば、それは随意運動である。「随意運動」という語は神経学で定義されているので、あなたが自分なりに定義することはできない。不随意運動には、心臓の鼓動、眼の虹彩のしぼり、胃腸の蠕動運動、シャックリなどがある。不随意運動のチック症というものは不可能である。心臓の鼓動のチック、眼の虹彩のチック症、胃腸のチック症、シャックリのチック症などは不可能である。
また、随意筋の不随意運動を症状とする病気としては、パーキンソン氏病の手のふるえ、顔面神経痛の目尻のピクピクする痙攣、ジストニアなどがあり、それらとの比較においてもチックの動作が随意筋の随意運動であることは明らかである。
咳は随意運動である。
クラシックのピアノのリサイタルの際、観客は演奏中は咳を我慢している。そして曲と曲とのあいまに咳をする。それは、「咳反射」であっても、咳が随意運動であるということである。熱い鍋の蓋に触ったときの反射運動を、あなたは不随意運動であると思うのだろうか。
シャックリは止めておくことができない。演奏中シャックリを我慢しておいて、曲と曲とのあいまにシャックリをまとめてする人はいない。一秒間でも止めていることができない運動、「それをする」という意識がありえない運動を不随意運動という。シャックリのチックは存在しない。
言い換えれば、ノイローゼ状態は喉の異物による咳反射の強制と咳チックの強制の違いによって認識されるのである。 「チック症」は強制される運動が随意運動であることを特徴とし、それは「強迫観念」と呼ばれる。
呼吸は随意運動である。
もし呼吸が不随意運動であったなら泳ぐことはできない。呼吸は随意運動であり、そしてそれは10分間我慢できるという意味ではない。チックの強迫的な動作も随意運動であり、そしてそれは10分間我慢できるという意味ではない。
不随意運動は、してみせることができない。シャックリは不随意運動であるから、本物のシャックリをしてみせることはできない。シャックリのチックは存在しない。
すべてのチックの動作は随意運動であるから、患者は医師に自分のチックの動作をしてみせることができる。診断の際に、もしも患者が医師に病的な動作をしてみせることができないのならば、それは不随意運動であり、チック症ではない。病的な動作が不随意運動の場合はチック症とは違う別の病気である。病的な動作が 100% 随意運動であるということがチック症であることの診断の条件のひとつとなる。
笑いのチック
笑いには随意運動に不随意的な要素、反射的な要素、自動的な要素が加わっている。お笑い芸人は自分は笑ってはいけないという鉄則があり、しばしば、腹筋を緊張させ、不随意的要素を外側から抑える。すなわち、我慢できない要素を我慢できる筋肉で抑えることにより、外見上、笑いを一秒間我慢することは可能である。内側の痙攣は我慢できていないのであり、そのことが外側から見える場合がしばしばある。逆に、笑う演技の時に、不随意運動の要素が外見に現れる本物の笑いを意識的にすることは、どのような名優にも不可能である。不随意運動はチックの動作としては不可能である。笑いのチックは必ず不自然な随意運動のみである。笑いのチックは存在するが、不随意運動の要素はなく、大きな声を伴う、不自然な笑いであり、汚言症に含まれる。
不随意運動と自動的運動を定義として混同してしまっている人がいる。ひとつの運動における数個の随意筋の中での、各々の随意筋の収縮と弛緩。たとえば、歩行の際の右足、左足、右手、左手の動き、呼吸、直立姿勢のバランス等は、通常は自動的な随意運動である。一日のうちのほとんどの随意運動は自動的に、気づかずになされている。もしも自動的運動が不随意運動ならば、歩行における諸筋肉の運動は不随意運動ということになってしまう。睡眠中の随意運動は、すべて自動的運動である。自動的な随意運動である呼吸は睡眠中も続く。
チックの動作は必ず意識によってなされるため、睡眠中はチックの動作はありえない。
ひとりの患者にとってチックの動作の位置(身体部分)と様態は極めて決定的であり、しかしながら、しばしば、それらは変わる。強迫は複数の身体部分の随意筋の上にも可能である。強迫は身体部分の病気ではない。
それに対し、病的な不随意運動が別の身体部分に場所を変えることはない。
チック症の動作は、意識は、したくないのに余儀なくされて「しなくてはならない」のである。意識には、神経症の身体的強迫に負けることが強制される。チック症の動作が不随意運動のわけがない。不随意運動とは光の変化に伴う眼球の虹彩のしぼりの動きなどである。虹彩の筋肉収縮は意識がしようとしてできるものではない。病的な動作が一秒間でも止めていることができるものであるのならば、それは随意運動であり、チック症なのであるが、逆に欲求にもかかわらず一分以上も止めていられるような場合はチック症ではない。指の関節をポキポキ鳴らす癖も、しなければしないでいられるようならば、ただの癖であり、トゥレット症候群ではない。患者の意識は絶対的な強迫の下でチックの動作をする。
強制される随意運動
チック症は、随意筋がそこに存在していることの感覚が意識の対象となる強迫である。意識がすることを強制されえるような運動は随意運動のみである。チック症の患者にとって、チックの動作をしないでいることは健康な呼吸や健康なまばたきをしないでいるのと同じほど無理なことである。
チックの動作は奇妙な動作、明確な直線的動作である必要がある。ひとつの随意筋への意識の強迫的志向性はトラウマ感情や性器感覚への意識の志向性を妨げる。強迫的筋肉とともに、チック症の動作の様態は無意識によって普通の動作からは外れた奇妙な様態が決定される。自然な動作の範疇に入らない、飛び出した動作でなくてはならない。それはチック症の動作をしなくてはならないということが患者の意識によって永続的に意識されていることを患者の無意識が目的としているからである。患者の意識の中で、チックの動作は普通の動作の中にまぎれない必要がある。患者の意識内での目立ちうる非合理性に対し、偽りの動機としての「確認」は神経症の常套手段である。汚言症の言葉は、患者の意識の中で目立つ、幼稚な、困る単語でなくてはならない。
チック症の動作が随意運動であるという事実は、トゥレット症候群の診断の基準のひとつであり、治療理論の基礎である。
極微なてんかん、極微なジストニア、その他による筋肉の不快感覚が KV の手段となることもある。極微なてんかんや極微なジストニアなどとの組み合わせの有無の診断が必要である。
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