薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §04

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§04

 

身体的抑圧 KV (Körperliche Verdrängung) が病的になっている場合。
歩いているときには体重が足の裏にかかるのであるが、それは通常は意識されない。また、上の唇と下の唇の接触、衣服の裏側と皮膚の接触など多くの身体的感覚が通常は意識から排除されている。フロイトの精神分析学の用語としての抑圧が精神的トラウマに関する抑圧のみであるのに対し、トゥレット症候群と強迫性障害の治療を目的としたKurikiメソッドでは抑圧という語はとても広い領域で定義されるのであり、身体的感覚も含めた、様々な意識対象の制限を抑圧の機能とする。Kurikiメソッドの理論は、そのような抑圧の仕組みの組合せで構成されている。チック症と強迫性障害の構造の下層部は古典的なフロイト精神分析学におけるトラウマ感情の抑圧の仕組みであり、上層部は身体的感覚における正常な抑圧の仕組みである。そして、上層部の存在が下層部の道具となっているのである。Kurikiメソッドの上層部のような構造はジークムント・フロイトの精神分析学には欠如しており、それがフロイトにはチック症や強迫性障害が治せなかった理由である。神経症の症状は身体感覚や身体的行動などの身体的症状である。身体的な抑圧の仕組みの存在が感情のかたまりの抑圧の手段であるからだ。神経症的になった上層部は下層部の抑圧手段である。
また、Kurikiメソッドの理論における « 合理化 (§13 – §19) » は、フロイトの合理化とは大きく異なるものであり、注意が必要である。

チック症の支配下における KV (KV それ自体 (1-2-3) は病的ではない。 KV が強迫性を帯びた場合 (4) が神経症である。) 

1. 不快な身体感覚(たとえば、椅子が硬い、足の疲労など)が抑圧対象となる。

2. 無意識が抑圧手段として意識内に作った不快な身体感覚の現れ(筋肉収縮のない筋肉収縮感覚、筋肉の不動性の感覚など)が意識対象となる。

3. 感覚-2 に対応するチックの動作を意識が強制されている際、感覚-1 が抑圧される。

4. さらに、この 1-2-3 の仕組み(上層部)の存在が感情のかたまり(下層部)の抑圧手段である状態。神経症、つまり 1 から 2 へ、2 から 3 へと強制するトンネル構造が絶対的な強迫である状態。トンネル構造とは、一度入ると出口がひとつしかないという意味である。絶対強迫において、下層部が上層部を絶対的に必要としている。強迫の力が絶対的であるのは抑圧の必要性が絶対的、機械的であるからである。チック症は、思考の中での、筋肉の不動性の身体感覚に関する強迫性障害である。Kurikiメソッドの理論においては、この強迫観念は感情的カタルシスによってのみ排除することができる。Kurikiメソッドでチック症が治った後は 1-2-3 の仕組みから絶対的な強迫性が消える。

チックとチック症の区別
チック(1-2-3):
身体的抑圧の先天的傾向。暑さ、寒さ、足の疲れ、腰の痛み、食べすぎ、など、様々な不快な身体感覚が抑圧の対象となる。身体的抑圧の機能は、さらに膀胱、直腸、性器、尿道の末端など、リビドー的な身体感覚も通常の意識から排除する。
チック症(4):
神経症。強迫的な対象の意識内への侵入がトラウマ感情の抑圧の方法となる。無意識は筋肉の不動的感覚を作り、意識内で行為の強迫性が増幅する。トラウマ感情の爆発的表現により、トラウマ感情の抑圧の必要性を少なくすること、それがチック症のための除反応である。それは病的な抑圧は感情の抑圧であり、そして神経症の症状が抑圧の手段であるからである。

したがって、神経症が治った後でも、明らかに不快な身体感覚がある場合、KVの身体感覚が現れ、チックの動作が意識対象となるであろう。しかし、チックの動作には絶対的な強迫性はないであろう。

身体的抑圧(KV)の仕組み
無意識の抑圧機能は別の意識対象をランダムにひとつ選ぶことにより抑圧対象を意識から排除する。神経症においては、身体的抑圧は絶対的な強迫性を持っている。
・チックの《筋肉内感覚》
随意筋肉群における筋肉収縮のない筋肉収縮の身体的不快感覚。随意筋の不動性の感覚。この感覚が意識の強迫的な対象となる。
・OCDの《強迫性身体感覚》
不安感は一種の身体的感覚である。強迫性障害の身体的不快感覚が不安のアドレナリンの分泌の全身的効果を模倣し、意識がその身体的不快感覚をランダムな強迫的対象への不安感として解釈する。この身体的不快感覚を抑圧するために同じ身体的不快感覚がさらに現れて重なり、不安対象への意識集中が増幅する。手を洗う強迫性障害の人は、もし意識においてバイ菌が嫌いであるのならば手よりも肛門を洗うべきであるが、肛門の括約筋はリビドー的身体感覚であり、むしろ抑圧対象である。これらの強迫性身体感覚は、無意識により実際に身体部分の中に作られ、身体的に知覚される特殊な感覚であり、意識内のみの錯覚ではない。絶対強迫の支配下で、これら強迫性身体感覚の強迫は意識内で増幅し、身体的レベルでの動作(行為)を強制する。増幅は強迫の増幅であり、神経症患者にとって強迫は一種の身体的感覚としてのみ知覚され、絶対強迫の枠は患者には見えない。意識内において、チック症の強迫対象が患者が既に知っている随意筋の筋肉群であるのに対し、強迫性障害の強迫対象は患者の眼前にある物である。
・恐怖症。恐怖は身体的状態であり、恐怖による身体的変化への恐怖として増幅し、意識は脱出を強制される。恐怖症の治療のためには、怒り、恐怖、不安などの感情を身体的状態として認識できることが大切である。

「KV」の定義
KV, n. f., は Kurikiメソッドの造語、Körperliche Verdrängung の略。Körperliche は身体的および身体的であることを意味し、Verdrängung は抑圧を意味する。KV は本当の不快な身体的感覚を抑圧するために別の身体部分に現れる偽の身体的感覚である。KVはアスペルガーおよび注意欠陥多動性障害(ADHD)の特異性の1つであると考えられる。いくつかの身体部分の感覚は無意識との間に直接的な伝導性があり、無意識からの命令に簡単に反応する。アスペルガーまたはADHDを持つ患者は、自分の神経過敏な傾向が分かっている。皮膚感覚、血圧感覚、唾液分泌低下感覚、発汗感覚などの身体感覚は直接的に無意識の神経症構造下にある。

KV の神経症化
トゥレット症候群のチック症では、選択された身体感覚は、言うなれば筋収縮のない筋収縮の感覚であり、強迫の対象として、Kurikiメソッドでは《強迫性筋肉内感覚》と呼んでいる。この身体的感覚は筋肉の不動という強迫観念とともに現れる。汚言症も、筋肉の収縮を伴わない筋肉の収縮の身体的感覚で形成され、その運動単位は、「xxxx」という単語を強迫的に発音するための筋肉群である。これらの身体的感覚は症状であり、無意識は抑圧の神経症的仕組みの一部としてこれらの症状を絶対的に必要とする。KVの症状は、その症状とほぼ同じ性質の他の何かを抑圧する手段である。抑圧される身体感覚は必ずしも性器の感覚とはかぎらない。チックの《筋肉内感覚》の現れは、食べ過ぎ、冷たい風、椅子が固すぎる、かばんが重すぎる、階段をたくさん上らなくてはならないなどの一般的な軽い苦痛によって引き起こされる。

例えば…
1. 患者の無意識は、疲れた足の筋肉の不快な身体感覚を抑制したい。
2. アスペルガーの仕組みの1つとしての KV として、無意識は意識の別の対象として、左肩に《筋肉内感覚》を作る。
3. 意識内で、左肩の筋肉の不動についての強迫観念が増幅する。
4. 彼の左肩のチックの動作をすることの強迫。
5. そしてもう一度、そしてもう一度。

OCD(強迫性障害)の患者の《強迫性身体感覚》は、しばしば皮膚感覚に現れる。

子供のチックの発症は非常に早く、三歳児にチックある場合もある。 その子供の無意識は、あらゆる小さな身体的な苦痛、不快な身体的感覚を抑圧しようとする。感覚に対する気持ちを抑圧する傾向はアスペルガーの子供特有である。

泌尿器、括約筋、生器などのリビドー的な身体部分を抑圧する必要性:3歳の子供にとって、これらの身体部分は、性的要素をもつと言うよりも、非常にリビドー的であると言える。

無意識内のレベルとしてのリビドーを考えるならば、性器部分の抑圧はリビドー的トラウマ感情の抑圧でもある。
神経症の症状は動作や行為ではなく、強迫性を増幅する身体的感覚の現れである。

KVは小さな三角形である。1)小さな身体的な痛み、(2)《強迫性身体感覚》(3)意識。
KVが神経症の一部である場合、この小さな三角形の存在は神経症の大きな三角形を抑圧する。(1)象徴的な性器部分、(2)リビドー的トラウマ感情、(3)意識。