薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §02

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§02

 

チック症および強迫性障害の治療法、Kurikiメソッドは、
1. 精神的トラウマを見つける方法、
2. 感情的カタルシスの方法、
3. チック症および強迫性障害の仕組みの理解である。

諸注意
・記述にはフロイトの用語が少なからず使われているが、それらの定義には大きな違いがある。
・Kurikiメソッドは認知行動療法 cognitive behavioral therapy (CBT) ではない。
・Kurikiメソッドは催眠療法ではない。
・以下の記述には特定の患者の個人的な内容は一切ない。
・治療中に運動チックの新しい様態が始まることが非常にしばしばある。チックの《強迫性筋肉内感覚》は身体のすべての随意筋において可能であり、ひとりの患者が二つ以上のチックの動作の様態をもてるということはチック症の特徴であり、その患者の病気がKurikiメソッドで治るタイプであることの目安となる。患者のチックの《強迫性筋肉内感覚》が身体部分に関する神経の器質的異常ではないこと、さらにチックの《強迫性筋肉内感覚》の身体部分が無作為にランダムに選ばれていることが明らかである。病歴において、チックの動作の身体部分が一つだけである場合には、その身体部分上での神経症的な身体的不快感覚と器質的な身体的不快感覚の区別が必要になるであろう。
・チック症に「てんかん」「ジストニア」の要素が伴っている場合、Kurikiメソッドは「てんかん」「ジストニア」の治療にはならない。
・強迫性障害に「うつ病」が伴っている場合は Kurikiメソッドの範囲外である。Kurikiメソッドは「うつ病」の治療にはならない。
・Kurikiメソッドは宗教団体、思想的団体、マインドコントロール等とは一切無関係である。
・Kurikiメソッドのすべての記述は§50で終了しており、理論は明確に完結している。
・トラウマ探し
チック症あるいは強迫性障害が(暑さ、足の疲労、腰の痛み、肛門括約筋、性器などの身体的不快感覚から気を逸らせる仕組みであることが理解されれば、精神的トラウマは二、三週間のうちに自動的に思い当たってくる。トラウマのイメージを具体的に見つけるのであるが、それとともに、チック症になりやすい子供は、トラウマがたとえどのような些細な内容であったとしても遅かれ早かれ少しずつ大きな感情のかたまりは形成されるものであるとも言える。少しアスペルガー的な子供には意識の中で言葉で表現されていないトラウマ的ことがらは容易には意識されない。感情のかたまりの形成の傾向は先天的素因であり、トラウマの個々の内容には左右されない。どのような内容のことがらがあったら感情のかたまりが形成されるかということではなく、逆に感情のかたまりの形成がトラウマイメージをテーマとして必要とする。無意識の中のトラウマは小さな子供の日常的なことがらのイメージである。ひとりの患者の無意識にとってトラウマ的イメージであっても、それは他の人間にとってはトラウマ的ではないかもしれない。少なくとも、その患者の意識にとってはトラウマ的ではない。裸体や皮膚接触などの毎日の変態行為の場合を除き、通常、トラウマの加害者には悪意はない。トラウマ感情を抑圧している子供は楽しそうなはずである。
・トラウマイメージが複数の場合は、一番古いイメージを中心として、感情のかたまりはタマネギ状、マトリョーシカ人形状に形成される。別の言い方をすれば、感情のかたまりはひとつのみであり、複数のトラウマイメージは新しいものから順に発見される。
・精神的トラウマの発見に伴い、幼児の無意識の虚像世界と大人の意識の現実世界を混同し、トラウマの加害者に対し現実世界で暴力をふるって仕返しをしたりすることのないよう、思考力の足りない患者は注意すること。
・5歳以前の記憶のトラウマ的要素は必ずしも事実とは限らない。
・チック症患者における感情的カタルシスの必要性: 子供は感情的カタルシスはしないが、大人の場合は感情的カタルシスが必要である。トゥレット症候群や強迫性障害の人の抑圧の密閉性は非常に厚く、トラウマイメージを発見しただけ、トラウマ感情の言語化だけでは除反応としては不十分である。神経症の治療は冒険であるから、勇気が必要である。トラウマイメージに小さなカタルシスの穴をあけ、少なくとも三ヶ月ぐらいかけて少しずつポテンシャルな抑圧された感情を抜く。トゥレット症候群や強迫性障害をもっている患者の場合は、除反応は意図的にのみ可能である。抑圧機能が強く、感情的カタルシスが自発的であることはない。感情のかたまりは巨大である。一度に摘出すると精神的《地盤沈下》により一時的に気持ちが悪くなるので、要注意。調子に乗って大爆発させると十分間ほど不安感を感じるので、その場合はあわてずに三十分ほど横になって休む。感情的カタルシスの大爆発は禁止。感情的カタルシスは一週間に一度、3秒ほどの小さな爆発を一発だけというペースである。この一週間に一度のカタルシスは、カレンダーに印をつけながら、必ず行う。