薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §46

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§46

 

Kurikiメソッドでのトゥレット症候群の治療は三ヶ月ぐらいかける。この日数の意味の説明である。
チック症の治療として、まず最初はチック症の《強迫性筋肉内感覚》が抑圧する身体的不快感覚の意識化から始める。たとえば、「この椅子が硬いので《強迫性筋肉内感覚》が現れるのだ」など。頻繁な意識化によって、二、三週間のうちに自動的にトラウマが分かってくる。
子供のチック症の場合は、身体的不快感覚は何かを親が考えて子供に言う。そして何がトラウマかを親が精神分析医と一緒に探す。
たとえば、身体的不快感覚は、「椅子が硬いんじゃないの? 硬かったら硬いからいやだと言いなさい」など。
トラウマは、たとえば、「パパは、少し女みたいに歩くね」など。
大人は、トラウマの感情を感情的カタルシスで週一回、三秒間だけ爆発させる。もうひとつ別のトラウマイメージが見つかる可能性がある。十回ほど感情的カタルシスをすれば《強迫性筋肉内感覚》の現れの頻度は明らかに減っているはずである。それが三ヶ月という意味である。この大雑把な目測で、読者はチック症を治すスピードがつかめると思う。しかし、もう少し丁寧な記述が必要かもしれない。
1. Kurikiメソッドは強力であるから、チック症を一発で治そうとするのは、強すぎて一時的な不安感を感じるので禁止。できるだけゆっくり治すことが大切である。そのためにも「短くとも、三ヶ月はかけて治そう」という気持ちがとても大切。もしも、正しいカタルシスの方法に関して無知なセラピストが自分のセラピストとしての能力を見せようとして愚かにも一発で神経症を治そうとするというようなことがあったのならば、それは患者にとって極めて有害なことである。危険である。感情のかたまりが質量をもつ巨大な物体であるということを認識していないセラピストには気をつけなくてはいけない。

土壌沈下の危険性

2. 週一回を守る。曜日を決めて、必ずカレンダーに印を付ける。「必ずカレンダーに印を付ける」は、筆者と読者のあいだの心からの約束だと思ってほしい。カレンダーに印を付けないということはフロイト的な抵抗である。
3. トラウマイメージの人物に現実世界で暴力をふるってはいけない。トラウマに対する感情の総量が感情のかたまりの量であり、カタルシスの総量、すなわち治療の総量である。怒りのかたまりが神経症という病気の核である。その怒りが病気である。(ただし、汚言症(コプロラリア)やツバをかけるチック症などの攻撃的な様子とトラウマイメージに対する怒りの感情のかたまりの攻撃性を同一視するのはチック症の構造への無理解を表す。)
4. 患者の個人差があり、また治療はゆっくりなほど安全であるので、四ヶ月、五ヶ月、(一年?)かけても構わない。カタルシスの強さ、絶縁体の厚さ、カタルシス直後の不安感、不安感の回復、《強迫性筋肉内感覚》の現れの頻度の減り方の各自のあんばい、各自なりのカタルシスの方法をつかむ。感情のかたまりの量はゆっくりとゼロに収束していく。
5. チック症の上層部だけの治療は無意味。不快な身体的感覚の意識化の強化によって上層部を治療するということは非論理的である。上層部は下層部の症状であり、下層部のカタルシスのみが上層部の治療である。トラウマイメージを現実レベルに戻してのカタルシスである。
無意識は言葉をもたないため、KurikiメソッドのKV(身体的抑圧)の理論では、トラウマイメージは患者の身体部分に位置的に結びつき、その身体部分が抑圧対象になる。別のランダムな身体部分が抑圧手段になる。また、皮膚感覚、血圧の変化、満腹感、空腹感など、さまざまな身体感覚が抑圧手段となり、チック症以外のKVが可能になる。抑圧手段としての満腹感は、過食症の可能性もあるし、たとえばチック症における不定的身体感覚としての可能性もある。
アスペルガー障害の人には、しばしば身体感覚の「抑圧」が見られる。夏、暑いときに「暑い」という身体感覚が意識内にないことがある。暑さの身体的抑圧が《強迫性筋肉内感覚》によってなされる可能性がある。トゥレット症候群の患者は頻繁に身体的不快感覚の言葉による意識化の習慣が必要。