薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §34

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§34

 

感情のかたまりは、ひとつの物のように無意識の中に埋もれている。探し出すまでは、何十年でも埋まっているものである。

精神的トラウマを探す
上層部は下層部が意識の対象になることを妨げる仕組みであるから、不定的抑圧感覚の頻繁な意識化を始めれば、二、三週間ほどで感情のかたまりの表面のトラウマイメージが自動的に見え始める。見え始めるとはイメージが思いつくということである。チック症の人は、はたして自分にトラウマがあるかないかと迷う必要はない。自分にトラウマがあるなどと信じる必要はない。チックの動作があるかぎり、チック症のトラウマは探せば必ず見つかる。数個のトラウマがタマネギ状に重なっている場合はカタルシスとともに、上から順番に、時間をさかのぼって見つける。
トラウマを探している時期に特別な自発的な行動をした場合は、重要な内容を含んでいる可能性がある。たとえば、ふだんは絵を描くことなどないのに、今日にかぎって紙に絵を描いたというような場合である。そこにトラウマの鍵が表現されている可能性がある。今日にかぎって写真を撮ったなどというときは、写っている物をひとつひとつ観察する。
トラウマを探すカギはチックの動作とはまったく無関係である。チックの動作内容や汚言症の単語は、てがかりとはならない。衝動制御障害においても、たとえば、抜毛癖も、トラウマと毛は関係ない。爪を噛むチックの原因のトラウマは爪とは無関係である。
チック症の原因は抑圧の状態の存在であり、トラウマの内容ではない。不快判断の凍結状態の維持である。意識内の不快を避けるために、直感的な強い不快判断が抑圧されたものが、何であれ、トラウマであるといえる。たとえば原始的身体感覚も性的な強い不快判断として抑圧されるときは下層部のトラウマであり、普通の身体感覚として抑圧されるのならば、それはトラウマではない。
夢が思い出せるときは、その内容を記録しておくのもひとつの方法である。

トラウマの可能性のリスト(不快判断の抑圧)
毎日繰り返されたこと、たとえば、
父親の裸体、
母親の裸体、
兄弟姉妹の裸体、
さわられるのがいやだ、
本当は、好きな子は誰か、
自分の性器的感覚への罪悪感、
男性性器の勃起と快感の秘密、
女性性器の快感の秘密、
性的ことがらに対する罪悪感、
排泄、
完全に無意識な同性愛的要素、
父親の同性愛的要素、
母親の同性愛的要素、
本当の同性愛、
誰かの特別な身体的特徴、
オイディプス、
など。
列挙を控えたことがらもいくつかある。

抑圧対象は「不快感情」である。たとえば、「さわられるのがいやだ」を抑圧した場合は、さわられるのがいやだとは思わない状態である。さわられたという事実のイメージは抑圧されない。神経症の症状はイメージから不快感情を絶縁状態にしておくための手段である。
たとえば、おじいさんやおばあさんのお葬式で亡骸を見たとしても、性的、性器的意味がなく、また毎日繰り返されているわけではないので、イメージはチック症の原始的被抑圧感覚とは結びつかない。ただし、一般に、お葬式では儀式的な雰囲気のなかで、そして自分の家族ということで、子供は亡骸に対する死体としての気持ち悪さを自分の頭の中で表現できない。とても小さな子供に死体を見せてはいけないのは当たり前である。リビドー的トラウマを生命的トラウマとするならば、そして死体のイメージを毎日、無意識的に思い出すとするならばチック症の原因にもなる可能性もある。また、そのように容易に思い当たるイメージによって本当に性的、性器的な不快感情がタマネギ式に隠される可能性もある。
たとえ性的、性器的でなくても、意識に入りきらないほど極端に過激なトラウマがチック症の原因になることもある。探すまでもないほど明らかなトラウマである。戦争、大事故、大災害、殺人などの特別に強度な心的外傷後ストレス障害 PTSD によるチック症は Kurikiメソッドの範囲外である。