薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §19

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§19

 

被抑圧身体感覚の位置

二つの不快な身体感覚の位置的対立、および同一位置における増幅
意識の対象としての身体部分は身体上の位置という属性をもっている。たとえば、腹筋のチック症の《強迫性筋肉内感覚》により腹筋の位置が意識対象となり、口のチック症の《強迫性筋肉内感覚》により口の位置が意識対象となる。膀胱、肛門、性器などの原始的感覚も抑圧がない場合は位置という属性とともに意識の対象となる。身体的抑圧の対象となる不快な身体的感覚と抑圧の手段となるチック症の《強迫性筋肉内感覚》は、ともに身体上の位置をもっている。チックの《強迫性身体感覚》と被抑圧身体感覚は位置的に対立し、二者選択の中で抑圧がなされる。また、冬の寒さ、酒の飲みすぎなどの全身的な不快感も全身に対する局部という形で身体的抑圧がある。身体的な抑圧は無意識が不快な身体感覚を抑圧しようとする仕組みであり、結果としては、かならずしも完璧な抑圧状態、身体的不快感覚がゼロの状態になるわけではない。

上層部において、リビドーは身体的感覚のひとつひとつに関する位置の属性には無頓着である。リビドーは合理化にしたがい質的および量的属性のみでチック症の《強迫性筋肉内感覚》を身体上に作り、意識は身体上の位置の属性を加えてその身体感覚を見る。したがって、まず被抑圧身体感覚の位置がチック症の《強迫性筋肉内感覚》のいつもの位置と同じである場合もある。
・肩が凝りやすい人の肩チックや首が疲れやすい人の首チックなど。
・チック症の《強迫性筋肉内感覚》は、ひとつの身体的不快感覚であり、抑圧の対象となる。チック症の《強迫性筋肉内感覚》の身体的不快感の抑圧が同じ場所のチック症の《強迫性筋肉内感覚》を手段とし、増幅する。チック症の《強迫性筋肉内感覚》は再帰的に増幅する。(再帰的被抑圧感覚、§28)
チック症の《強迫性筋肉内感覚》が膀胱、肛門、性器などの原始的感覚の抑圧の場合
上層部においては、チック症の《強迫性筋肉内感覚》のひとつひとつは、不定的な身体感覚の抑圧の手段である。椅子が硬い、食べ過ぎ、背中の痛み、足の疲れ、スポーツの最中の全身的な疲れ、など。それに対し下層部では上層部の存在が感情のかたまりの抑圧手段となる。原始的感覚は身体的感覚としては上層部なのであるが、同時に下層部における意味をもっている。これは幼児期において語られる。それは、トラウマは身体部分に関するトラウマであるということ。
「リビドー」は精神分析学の用語であり、神経症の治療の中で解釈される単語である。神経症の治療のためだけの表現であることを知らない人は、この単語を一般化して使用してしまうであろう。この単語は健康な精神には意味をなさない。「人間の精神の中にはリビドーが存在する」というのは妥当ではない。「リビドーという単語を使うと神経症の治療法の中での表現が容易になる」というのが妥当である。

Kurikiメソッドでは精神の領域と身体の領域の交叉領域におけるエネルギーをリビドーと定義する。性的に現れたときのみ、大人の意識によって性欲と判別されるが、リビドーエネルギー自体は大人の性欲としての語義の範疇だけには限定されない。また、チック症の《強迫性筋肉内感覚》が性器の感覚の抑圧の場合でも、チック症の《強迫性筋肉内感覚》自体には大人の性欲としての意味はない。リビドー、性的、性器的という語を小さな子供の身体的レベルで理解する必要がある。大人の場合でも、リビドーは小さな子供の身体的精神的レベルのエネルギーと同じリビドーである。小さな子供の意識の中では性欲と性器のつながりはない。性欲と性器は無意識の中のリビドーレベルだけで結びついている。精神的トラウマは性的性器的であり、感情のかたまりの抑圧が膀胱、肛門、性器などの原始的感覚の抑圧によってなされる。不快な不定的身体感覚がチック症の《強迫性筋肉内感覚》によって抑圧されるという病的仕組みの形成は、原始的身体感覚の身体的抑圧を起源とする。さらに、原始的身体感覚を病的に抑圧することの原因は感情のかたまりの抑圧を起源とする。