『夜の果てへの旅』を読んでみる 07

              
 

セリーヌ
夜の果てへの旅』を読む 07

Déjà notre……

||「戦争はまだ続いているのではあるのだが」という句が「種を蒔く」の間にはさまっている。|| hystérique は、ここでは名詞として使われており、前の人称代名詞 elle (怒りを抱いたままではあるが、我々の一応の平和)の同格語。平和は女性名詞なので当然女性の人称代名詞が使われるのであるが、ここではそれ以上に擬人的な表現が続いている。|| rien qu’à 「何々するだけで」という言い方。|| louchant この居酒屋の地下室は改築してダンスホールになっていた。壁に沢山の鏡が貼ってあり、人々はしばらく中にいると目が変になってしまう。現在分詞による形容詞で、やぶにらみにさせるという意味。|| ここでの音楽は当時のジャズであろうが、第一次世界大戦が終わる頃といえば、アメリカではまだデキシーランドジャズしかない。ニューオーリンズの白人はユダヤ人が多かったようだ。|| 続く文はダンスホールの中の長いソファにすわっている人々の人種や様子を表している。|| peine 容易には思い出せないという意味であり、苦しみのことではない。|| l’aujourd’hui, cette chose 単数名詞で、段落の始めに書かれている「平和」のことであるが、ここでは意味的には明瞭には書かれていない。


ルイ=フェルディナン・セリーヌ夜の果てへの旅