セルジオ・メンデスとブラジル’66時代のラーニー・ホール(ラニ・ホール)

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日本では彼女の名前が「ラニ・ホール」と記されていることが多々ある。英語には音節の長短の区別はないのだが、インタビューのビデオなどで名前を呼ばれているところを聞くと、曖昧母音では発音されておらず、曖昧母音で発音されない音節にはアクセントが置かれていると考えるならば、これら二つの母音は長く伸ばして書かれるのが好ましいように思える。とくに短母音のイがエに近く発音されるのに対し、長母音の、これは長いという意味ではないが、長母音のイは日本語の外来語の書き方の習慣として長くニーと書かれることになっているはずである。都市名としてのパリは伸ばしてパーリーとは書かれないが、パリはフランスで短く発音される語である。日本人は棒で伸ばした母音は、その母音を二回重ねて発音する。気の狂った国語学者は伸ばした音を一音節に数えるらしいが、和歌や俳句での音の数の数え方でも明らかなように、伸ばした音は二音節であると私には思える。その意味ではラアニイかもしれないが、それには違和感がある。結論としては、ビデオでハーブ・アルパートが彼女の名を発音しているところを聞いた限りでは、私にはラーニーと聞こえる。下のビデオの 2:23 辺り。

セルジオ・メンデス&ブラジル’66
1966:Herb Alpert Presents; Sergio Mendes & Brasil’66
1967:Equinox
1968:Look Around
1968:Fool on the Hill
1969:Crystal Illusions
1969:Ye-Me-Lê
1970;Live at the Expo
1971:Stillness

Kate Bushの五音階的共通音による遠い調への転調の音楽以来三十年、音楽がほとんど進化していないのにくらべ、ブラジル’66の五年間はまさに音楽のカンブリア紀と言えます。1966年のレコードにDay Tripper が入っているのは当時のヒット曲ということであり、1971年と言えば、もうChick Coreaの Return to Foreverの電気ピアノの年です。(それにしてもWhat Game Shall We Play Today をラーニー・ホールで聴きたいものだ。)セルジオ・メンデスが電気ピアノを使ったのがとても早くて、1968年のレコードで既に使っています。同じ年にMiles Davis は電気ピアノをFilles de Kilimanjaro で実験的に使っています。Stevie Wonder のSuperstition が1972年。You Are the Sunshine of My Life が1973年です。タイトル曲の Fool on the Hillを聴くと、ラーニー・ホールの美声の二重録音、セルジオ・メンデスの電気ピアノと歌、 Herb Alpertのトランペットの二重録音、ハープ、電気ベース、Mellotronのフルート音、Mellotronのストリングス音、Mellotronのブラス音、電気のチェンバロ音が美しく使われています。Mellotronはシンセサイザーの前身で、本物の楽器の音を磁気録音した鍵盤楽器です。新しい音を混ぜての採用です。 Fool on the Hillのイントロのメロディーは知っているが、楽器を思い出せる人は少ないはずです。Mellotronのバスフルートとブラスの音、電気チェンバロの2オクターブのユニゾンです。このイントロは傑作です。

1965年、セルジオ・メンデスは、アメリカで、非常に美しい声の女性歌手を偶然発見します。その頃、女性歌手が二人並んで歌うグループを作ったらウケそうだというようなアイデアを持っていた彼は、イメージだけのウソの女性をひとり置くことによって、このラーニー・ホールのアルトファルセットの声だけのユニゾン多重録音でレコードを作るという結論に到ります。(Double track vocals).

アメリカでの音楽ビジネスですから、セルジオ・メンデス&ブラジル’66は、アメリカでのラテンポップのグループです。セルジオ・メンデスは、アメリカで、当時ブラジルで流行っていた本物のブラジルの曲をブラジルの言葉で歌ったレコードを作ろうとしていたのです。ラーニー・ホールはアメリカ人、二十歳そこそこの女性です。シカゴに生まれ、シカゴに住んでいましたからブラジルのポルトガル語など一言も話せません。しかし、その声があまりにも美しい。歌がうまくて、見た目がかわいい女性歌手なら探せばいくらでもいるのがアメリカ。しかし、声の美しさは生まれつき、練習で変わるものではありません。電話の声でもすぐに誰かが分かるというのが人の声です。ブラジルの言葉の発音を、一音節、一音節と教えてまでしても、このアメリカ人の女性に歌わせるほど、ラーニー・ホールは美声の歌手なのです。歌手がふたりいるし、多重録音をするのだから、ひとりをアメリカ人、ひとりをブラジル人にすればいいのですが、全部ラーニー・ホールの多重録音にするほどなのです。

セルジオ・メンデスはとてもセンスの良い音楽家です。グループ名によってセルジオ・メンデスの考えがいつ頃のものであるかがすぐに分かります。セルジオ・メンデスの斬新さとして、まずコンガの使用があります。コンガは、ブラジルの音楽の楽器ではありません。ボサノバのグループにコンガが入っているのはとんでもないことです。ラテン・グループのイメージです。

私は、セルジオメンデスは、左利きの人だと思うのです。グレン・グールドとルートヴィヒ・フォン・ベートーベンは左利きピアニストのチャンピオンです。、ジャズピアニストの中ではエロール・ガーナーが左利きです。Glenn Gould、Erroll Garner. セルジオ・メンデスはピアノを ff で弾くことを知っていますし、ピアノのハーモニーのバランスがベートーベン的だと思います。普通のジャズのハーモナイズ(増四度、半音、四度、など)に合わせて、中低音に10度がよく使われている安定した太いハーモニーは、ボサノバという軽い音量の音楽を飛び出した、遠慮のない、パンチのあるピアノです。最初の二枚のレコードでは、ベーシストとともに一度ちゃんと楽譜化したハーモニゼーションがなされています。

セルジオ・メンデスの「ユニゾン好き」。
フィフス・ディメンションの「ビートでジャンプ」Fifth Dimension、Up Up And Away、 は1967年です。このコーラスグループの5人のメンバーがユニゾンで歌います。三度でズルズルとハモるのはダサいということです。スティービーワンダーの「ゴールデン・レディ」stevie wonder、golden lady は1973年です。ひとりの声を多重録音します。余談ですが、ピアノはユニゾンの楽器です。最低音域以外は、各音二本、三本の弦のユニゾンです。セルジオ・メンデスの「ユニゾン好き」もこのへんから来ているのかもしれません。

ユニゾンコーラスは、聞く人も一緒に歌っているような気がするという魅力もあります。楽譜的にメロディーが決定されているということです。即興演奏、即興的な歌い方は、つまらない。ただし、スティービー・ワンダーは例外。一緒に歌うということは音楽の基本的かつ原始的楽しみです。

セルジオ・メンデスとブラジル’66は、「まるで二人の女性が歌っているようなイメージ」が作られています。たぶん、同じ声が重ねてあることに気が付いていない方が多いのではないでしょうか。レコードジャケットやテレビなどの二人の女性のイメージは、セルジオ・メンデスの音楽の視覚化であると思います。

セルジオ・メンデスは、音楽スタイルの視覚化のためにもうひとり女性を置かなくてはならないわけです。もうひとりの女性はそれほど頻繁にはレコーディングスタジオに来ていないのではないでしょうか。二人の女性のイメージが不可欠であるため、レコードジャケットの名前は、「ラーニー・ホール」にはなりません。グループのイメージです。また、ブラジル’66は、レコーディングスタジオの外でも存在する必要があります。

ブラジル’66のようなグループは、ブラジル’65以外では、ブラジル’66の前に”ボサ・リオ”と呼ばれるグループがありました。(私は「塩の歌」が好きです。)Bossa Rio、Canção do Sal。ボサ・リオの歌手がグラシニャ・レポラーシでした。Gracinha Leporace。これがまた全身、歌、という感じの人なのです。グラシニャ・レポラーシは絶対音感がありそうな気がします。グラシニャ・レポラーシ(ライブ録音の英語でのメンバー紹介では、セルジオ・メンデスはなんと「グラシンハー・レポラセ」と発音しているのだ)は、のちにセルジオ・メンデスの奥さんになります。グラシニャ・レポラーシがブラジル’66で歌うのはずっとあとのことになります。必要なのはイメージとしての第二の声の役の女性です。本当の歌手ではないほうがいいのです。

音楽のスタイル、アイデアはセルジオ・メンデスのものですが、実際の具現化は、歌っているラーニー・ホールの素質によるものです。ブラジル’66の存在は、完全にラーニー・ホールに依存しています。各曲は、聞く人々がラーニー・ホールのきれいな声に耳を傾けるように作られています。ほかの歌手ではダメなのです。

ラーニー・ホールは五年間、セルジオ・メンデスのグループで歌います。

ラーニー・ホールは英語を話す人ですから、ボサノバの曲にもブラジルの人にはない強弱によるアクセント ( > ) がつきます。グラシニャ・レポラーシは飽和状態で歌います。

セルジオ・メンデス&ブラジル’66のディスコグラフィー
まず、最初のグループの三枚のレコードが出ます。
1966: ハーブ・アルパート、プレゼンツ:セルジオ・メンデス&ブラジル’66、Herb Alpert Presents; Sergio Mendes & Brasil ’66
1967: イークイノックス、Equinox 、一か八かで「秋分」と訳したら間違いでしょうか。
1968: ルック・アラウンド、Look Around
ブラジル’66の最初のグループのヴォーカルはラーニー・ホールとジャニス・ハンセンです。Janis Hansen.
二人の女性のイメージですが、ラーニー・ホールの声の多重録音です。
最初の二枚のレコードは伴奏はドラム、パーカッション、ベースの他はピアノのみです。彼らはコーラスもさせられます。
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。[2 ]は、二重録音を意味します。
男性の声はセルジオ・メンデスです。記してありません。

1966: Herb Alpert Presents: Sergio Mendes & Brasil ’66
(A&M Records; Producer Herb Alpert, Jerry Moss)
1.Mas Que Nada [2 Lani Hall ].  (Jorge Ben) Sai da minha frente, que eu quero passar!
ラーニー・ホールだけが、二回歌って重ねています。クリップなどではふたりで歌っているように見えますが、同じ声です。
2.One Note Samba [2 Lani Hall ]. (Antonio Carlos Jobim / Newton Mendonça)


3.The Joker [2 Lani Hall ]. (Leslie Bricusse / Anthony Newley)
4.Going Out of My Head [2 Lani Hall ]. (Teddy Randazzo / Bobby Weinstein)


ピアノがすごい pp のところがあります。
5.Tim Dom Dom [ Lani Hall ]. (João Mello / Clodoaldo Brito)
6.Day Tripper [2 Lani Hall ]. (John Lennon / Paul McCartney)
ピアノのアドリブで、C7 でのシのナチュラルはモーツァルトでしょうか。
私は小学生の頃、デイトリッパーというのは何かストリッパーのようなものだと思っていて、この曲名がはずかしかったことを思い出します。
7.Água de beber [ Lani Hall ]. (Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Moraes / Norman Gimbel)
8.Slow Hot Wind [ Lani Hall ]. (Henry Mancini / Norman Gimbel)
9.O Pato [2 Lani Hall ]. (Jayme Silva / Neuza Teixeira)


このピアノの合いの手には、ハッとします。
10.Berimbau [2 Lani Hall ]. (Baden Powell / Vinícius de Moraes)
Sérgio Mendes – Keyboards, Vocals, Arranger
Lani Hall – Vocals
Bob Matthews – Bass, Vocals
Jose Soares – Percussion ( Mas Que Nada に於ける両手指パッチンも含む。ただし、二発目の指パッチンは片方不発に終わっている。また、Day tripperに於いては、手拍子とともにしていた指パッチンを一回余計にしている。ただし、ピアノのアドリブは16ではなく18小節している。Mas Que Nada のヒットでは彼のタンバリンが重要な役を演じているのでそのつもりで聞きましょう。 ), Vocals
Joao Palma – Drums
彼のリムショットのリズムできゅうりの輪切りがしたい。
Água de beber のトロンボーンはアービー・グリーン Urbie Green だと思います。ドラムの João Palma と Urbie Green は、いろいろなところでしばしば一緒に仕事をしています。もしそうならばなぜ一曲に二回もアドリブ部分のあるこの一流のトロンボニストの名前が伏せてあるのでしょうか。二枚目のレコードでも名前が伏せてあります。レコーディングスタジオには覆面をして現れ、名前をたずねても答えなかったそうです。
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。

1967: Equinox (A&M Records, Producer Herb Alpert, Jerry Moss )
1.Constant Rain [2 Lani Hall]. (Chove Chuva) (Jorge Ben / Norman Gimbel)
その場にある楽器なら何でも使うのがブラジル音楽の心。なければ手拍子。オモチャの箱から出してきたような楽器。
2.Cinnamon and Clove [2 Lani Hall+ Janis Hansen chorus ]. (Jonny Mandel / Alan & Marilyn Bergman)
この曲ではジャニス・ハンセンの声がとてもよく聞こえます。高い音域の赤ちゃん声です。
3.Watch What Happens [2 Lani Hall]. (Michel Legrand / Jacques Demy / Norman Gimbel)


4.For Me [2 Lani Hall ]. (Edu Lobo / Norman Gimbel)
イントロの6小節目でラーニー・ホールのハミングが聞こえます。
5.Bim Bom [2 Lani Hall, + Janis Hansen in chorus]. (João Gilberto)


風邪をひいている人がいます。
6.Night and Day [2 Lani Hall]. (Cole Porter)
7.Triste [2 Lani Hall , + Janis Hansen in chorus ]. (Antonio Carlos Jobim)


ドラムが9小節めではなく、11小節めから入ります。
8.Gente [2 Lani Hall ]. (Marcos Valle / Paulo Sérgio Valle)
9.Wave [2 Lani Hall ]. (Antonio Carlos Jobim)
多重録音のユニゾンのコーラスです。イントロの together は三回。
10.Só Danço Samba [Lani Hall, +Janis Hansen in chorus]. (Jazz ‘n Samba) (Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Moraes)
“Só” は、 “only” という意味です。
ジャニス・ハンセンの声が聞こえます
Sérgio Mendes – Piano, Vocals, Arranger
Lani Hall – Vocals
Janis Hansen – Vocals
John Pisano – Guitar
I think it can be John Pisano who is playing a real small sitar in Constant Rain. If it ware a prepared guitar as a fake sitar, a guitarist could play much much better and in different ways. If it had been a prepared guitar, you would not have done imitation of guitar choking.
Bob Matthews – Bass, Vocals
José Soares – Percussion, Vocals
João Palma – Drums
The same trombonist as in Água de beber is playing in Wave and Bim Bom , I think it’s Urbie Green.
Bruce Botnick – Engineer
Larry Levine – Engineer
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。

1968: Look Around (A&M Records, Producer Herb Alpert, Jerry Moss)
1.With A Little Help From My Friends [2 Lani Hall ]. (John Lennon / Paul McCartney)
ハーモ二アムのようなシンセサイザーの非和声音 (7th, 4th, etc.) が始終聞こえます。Paul Hindemith?
2.Roda [2 Lani Hall ]. (Gilberto Gil / João Augusto)
3.Like A Lover [2 Lani Hall ]. (Dori Caymmi / Nelson Motta / Alan Bergman / Marilyn Bergman)
4.The Frog [2 Lani Hall]. (A Rã) (João Donato)
5.Tristeza (Goodbye Sadness) [ ]. (Haroldo Lobo / Niltinho Tristeza)
6.The Look of Love [Janis Hansen, + Lani Hall]. (Burt Bacharach / Hal David)


ジャニス・ハンセンがリードボーカルとして歌ったのは三枚のレコードで、この一曲のみ。最初の8小節の後で、早くも半音上に転調。
80年代初頭にテレビ番組で生でラーニー・ホールがマイクを持ってこの曲を歌っています。

7.Pra Dizer Adeus [ Lani Hall ]. (To Say Goodbye) (Antonio Carlos Jobim / Lani Hall)
8.Batucada [2 Lani Hall ]. (The Beat) (Marcos Valle / Paulo Sérgio Valle)
A batucada surgiu menjish. イントロが、ブレイクの前に16ではなく18小節あります。二回目の”Mas a vida se vai”のところで録音の声が割れています。
9.So Many Stars [ Lani Hall ]. (Sérgio Mendes / Alan Bergman / Marilyn Bergman)
アラン・バーグマン、マリリン・バーグマンについてはこちらです。
http://www.alanandmarilynbergman.com/works-recorded.htm
10.Look Around [2 Lani Hall , + Janis Hansen in chorus ]. (Sérgio Mendes / Alan Bergman / Marilyn Bergman)
Sérgio Mendes – Organ, Piano, Arranger
Lani Hall – VocalsJanis Hansen – Vocals
Bob Matthews – Bass, Vocals
João Palma – Drums
John Pisano – Guitar
José Soares – Percussion, Vocals
Dave Grusin – Arranger
Dick Hazard – Arranger
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。

1968、SOMETHING FESTIVE という寄せ集めアルバムの中の一曲のみ。
The Christmas Song [2 Lani Hall ].

1968: Sergio Mendes’ Favorite Things (Atlantic Records, Producer Nesuhi Ertegün )
1.My Favorite Things (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein)
2.Tempo Feliz (Happy Times) (Baden Powell / Vinícius de Moraes)
3.Ponteio (José Carlos Capinam / Edu Lobo)
4.Veleiro (The Sailboat) (Edu Lobo / Torquato Neto)
5.A Banda (Chico Buarque)
6.I Say A Little Prayer (Burt Bacharach / Hal David)
7.Comin’ Home Baby (Bob Dorough / Ben Tucker)
8.Boa Palavra (The Good Word) (Caetano Veloso)
9.O Mar é Meu Chão (The Sea is My Soil) (Nelson Motta / Dori Caymmi)
10.So What’s New (John Pisano)
これは、歌のない、インストゥルメンタル・イージーリスニング・ホテルエレベーター音楽ですのでブラジル’66ディスコグラフィーから除外されます。

1968年、マイルス・デイビスはアルバム「キリマンジャロの娘たち」で、それまでのハービー・ハンコックからチック・コリアに、ロン・カーターからデイヴ・ホーランドにメンバーを変えています。
ザ・ルック・オブ・ラブが大ヒットしたときには、セルジオ・メンデスもさすがにショックを受けて、このグループもいよいよこれで最後かと思ったに違いありません。
1968年にメンバーが変わります。
セルジオ・メンデス – ピアノ
ラーニー・ホール – ボーカル
カレン・フィリップ – ボーカル
ジャニス・ハンセンはラーニー・ホールのうしろの方でコーラスとして歌っていましたが、カレン・フィリップはラーニー・ホールの横で歌えるだけの歌唱力があります。私の耳にはアルバム「フール・オン・ザ・ヒル」の全曲のなかで彼女の声が聞こえるのはスカボロー・フェアーの彼女だけの二重録音のみです。
ルーベンス・バシーニ – コンガ
ドン・ウン・ロマオン – ドラム
彼は1971年にウェザーリポートのパーカッショニストになります。彼はフローラ・プリムの最初の夫でしたが、どうでもいいです。
セバスチアオン・ネト – エレクトリック・ベース
彼は本当にエレクトリックベースの演奏が好きなのでしょうか?彼はジョアン・ジルベルト、スタン・ゲッツのベーシストでした。すると、”イパネマの娘”(1964年)と”フール・オン・ザ・ヒル”は、同じベーシストだったわけです。ブラジル’66 の頃はまだエレクトリックベースと16ビートが始まったばかりで、現代の耳には、まだ進化していないものとして聞こえます。Moanin’, Crystal Illusions, Ye-Me-Lê, Easy To Be Hard などでのアドリブ部分のベースは、理解できないものです。

五枚のレコードが出ます。
1968:フール・オン・ザ・ヒル Fool on the Hill
1969:クリスタル・イリュージョンズ Fool on the Hill
1969: イェメレ Ye-Me-Lê
1970;万博ライブ Live at the Expo Stillness
1971: スティルネス Stillness

Thanks to hardbossa

1968: Fool on the Hill (A&M Records, Producer Sérgio Mendes )
1. Fool on the Hill [2 Lani Hall ]. (John Lennon / Paul McCartney)
2. Festa [2 Lani Hall, (Gracinha in chorus)]. (Dori Caymmi / Paulo César Pinheiro / Lani Hall)
3. Casa Forte [2 Lani Hall ]. (Edu Lobo)
セルジオ・メンデスがチック・コリアに影響を与えたことが分かります。
「やまないで、行かないで、笑わないで、言わないで、山田」に聞こえてきます。
4. Canto Triste [ Lani Hall ]. (Edu Lobo / Vinícius de Moraes / Lani Hall)
5. Upa, Neguinho [ 2 Lani Hall, +Gracinha Leporace in back chorus with Sergio Mendes]. (Edu Lobo / Gianfrancesco Guarnieri)
6. Lapinha [ Gracinha Leporace ]. (Baden Powell / Paulo César Pinheiro)
Piano starts at 1:20. The most beautiful getting-in of piano.
7. Scarborough Fair [2 Lani Hall ]. (Traditional, arranged by Paul Simon and Art Garfunkel)
8. When Summer Turns To Snow [ Lani Hall ]. (Dave Grusin / Alan Bergman / Marilyn Bergman)
9. Laia Ladaia (Reza) [2 Lani Hall ]. (Edu Lobo / Ruy Guerra / Norman Gimbel)
Ó meu santo protector Traga o meu amor
半音上げてから、Cm7 F7…口笛..Ebm7 Ab7….
Sergio Mendes – Piano
Lani Hall – Vocal
Karen Philipp – Vocal
Dom Um Romão – Batterie
Rubens Bassini – congas
Sebastião Neto – Bass électrique
John Pisano – Guitar
Oscar Castro-Neves – Guitar
Dave Grusin – Orchestra Arranger
Gracinha Leporace – Vocal
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。

1969: Crystal Illusions (A&M Records, Producer Sérgio Mendes, Herb Alpert )
1 The Dock of the Bay [3 Karen Philipp ]. Steve Cropper, Otis Redding (1968)
ベース(和音の根音)とメロディーが同じです。
2 Viola [2 Lani Hall ]. (Viola Enluarada) Marcos Valle, Paulo Sérgio Valle
Viola, violão = guitarra. “Baden Powell foi um violonista brasileiro.”
3 Song of No Regrets [ Lani Hall ]. Lani Hall, Sérgio Mendes
4 Salt Sea [2 Lani Hall ]. Lani Hall, Sérgio Mendes, Sebastião Neto
5 Empty Faces [2 Lani Hall ]. Lani Hall, Milton Nascimento
6 Pretty World [ 2 Lani Hall]. (“Sá Marina”; Antonio Adolfo, Tibério Gaspar; Alan Bergman, Marilyn Bergman)
7 Dois Dias [2 Lani Hall ]. Dori Caymmi, Nelson Motta
8 You Stepped out of a Dream [2 Lani Hall ]. Nacio Herb Brown, Gus Kahn
メロトロンのトランペットの音を使っているように思います。Mellotron
9 Crystal Illusions (Memórias de Marta Saré) [ Lani Hall ]. Gianfrancesco Guarnieri, Lani Hall, Edu Lobo
Sergio Mendes – Piano
Lani Hall – Vocal
Karen Philipp – Vocal
Dom Um Romão – Batterie
Rubens Bassini – congas
Sebastião Neto – Bass électrique
Oscar Castro-Neves – Guitar
Dave Grusin – Orchestra Arranger
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。

1969: Ye-Me-Lê (A&M Records, Producer Sérgio Mendes)
1.Wichita Lineman [ Lani Hall left, Karen Philipp right]. (Jimmy Webb)
2.Norwegian Wood [ 2 Lani Hall left, +2 Karen Philipp right] (John Lennon / Paul McCartney)
3.Some Time Ago [ Lani Hall ]. (Sergio Mihanovich)
4.Moanin’ [ 3 Karen Philipp ]. (Bobby Timmons)


私は小学生の頃、アート・ブレイキーのこの曲は朝のことだと思っていました。
5.Look Who’s Mine [ Lani Hall ]. (Marcos Valle / Paulo Sérgio Valle / Alan Bergman / Marilyn Bergman)
6.Ye-Me-Lê [Gracinha Leporace extreme left, Lani Hall left-center, Karen Philipp ] (Luis Carlos Vinhas / Chico Feitosa)
7.Easy To Be Hard [ 2 Karen Philipp ]. (James Rado / Gerome Ragni / Galt McDermot)
8.Where Are You Coming From? [ ]. (Dori Caymmi / Nelson Motta / Lani Hall)
9.Masquerade [2 Lani Hall ]. (Leonard Haynes / Ron Rose)
10.What the World Needs Now [3 Karen Philipp, 黒人女性のような声も出ます。 ] (Burt Bacharach / Hal David)
Sergio Mendes – Piano
Lani Hall – Vocal
Karen Philipp – Vocal
Dom Um Romão – Batterie
Rubens Bassini – congas
Sebastião Neto – Bass électrique
Oscar Castro-Neves – Guitar
Dave Grusin – Orchestra Arranger, Conductor
Larry Levine – Engineer
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。

1970: Live at the Expo’70
私は、これを幼少のときにテレビで見ました。グラシニャ・レポラセのボサリオが前座で出たのもテレビで見ました。ブロンドの女性が歌っていたこととか、フール・オン・ザ・ヒルを「丘の上の愚者」と訳されてタイトルが出たのを笑ったことなどを思い出します。コンガの人の顔も忘れ難いです。ドン・ウン・ロマオンが偉大なドラマーとはその頃は誰も知らなかったでしょう。よく奇声を発するのはドン・ウン・ロマオンなのかルーベンス・バシーニなのか分かりません。ラーニー・ホールがアルト・ファルセットではなく、元気よく歌っています。ラーニー・ホールがリードボーカルですから、カレン・フィリップは当然、歌いだしの音がいつもひとつ抜けることになります。もしも、リードボーカルが違う歌詞で歌い始めても合わせられるというわけです。
批判が多いレコードですが、実際に目の前でラーニー・ホールとカレン・フィリップがプリティー・ワールドを歌い始めるのを想像して聞きましょう。ラーニー・ホールが左、カレン・フィリップが右です。
1. What the World Needs Now/Pretty World (Sa Marina)
2. Going out of My Head
3. Pra Dizer Adeus [To Say Goodbye]
4. (Sittin’ On) The Dock of the Bay
5. Day Tripper
6. The Fool on the Hill
7. Scarborough Fair
8. Norwegian Wood
9. Mas Que Nada
ラーニー・ホールとカレン・フィリップが三小節単位、他が二小節単位で繰り返します。
10. Viola
Sérgio Mendes – Piano
Lani Hall – Vocals
Karen Philipp – Vocals
Sebastião Neto – Bass
Rubens Bassini – Percussion
Dom Um Romão – Drums
At the Theatre Expo, 1970, Osaka, Japan.

1971: Stillness (A&M Records, Producer Sérgio Mendes, Herb Alpert)
1.Stillness [ Lani Hall ] (Paula Stone)
2.Righteous Life [ ラーニー・ホールが始めに出て、次がカレン・フィリップ] (Paula Stone)
3.Chelsea Morning


[ 始めから終わりまでカレン・フィリップ(ファルセットでない声)とラーニー・ホール(ファルセット)がピッタリ重なって歌っています。最後にグラシニァ・レポラーシが加わります。((” I will bring you incense Owls by night By candlelight By jewel-light If only you will stay” )。”second ” と”tenses” は、カレン・フィリップのファルセットの声。最後のフェイドアウトの三度音程のコーラス(” I woke up, it was a Chelsea morning” )はカレン・フィリップが上の声)、ラーニー・ホールが下の声です。 ] (Joni Mitchell)
歌だけでなく、ドラムとコンガもよく聞いてください。こういうドラムを「ドラムがよく歌っている」といいます。セルジオ・メンデスもG7で、白鍵ばかりで乗っています。
4.Canção do nosso Amor [ ] (Silveira, Medeiros)
5.Viramundo [ Lani Hall 左、Gracinha Leporace 中央、Karen Philipp 右 ] (Gilberto Gil, José Carlos Capinam)
6.Lost in Paradise [2 Gracinha Leporace ] (Caetano Veloso)
7.For What It’s Worth [3 Karen Philipp ] (Stephen Stills)
8.Sometimes in Winter [ Lani Hall] (Steve Katz)

9.Celebration of the Sunrise [ Lani Hall , Karen Philipp falsetto ]
10.Stillness (Paula Stone) [ Lani Hall ]
Sergio Mendes – Piano
Lani Hall – Vocals
Karen Philipp – Vocals
Claudio Slon – Drums
Rubens Bassini – congas
Sebastião Neto – Basso elettrico
Oscar Castro Neves – Guitar
[ ] の中は、歌っている女性歌手の名前ですが、私の耳で判断したものであり、公式の資料によるものではありません。