薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療 §38

Kurikiメソッド(the first edition in 2007)はトゥレット症候群(チック症)および強迫性障害を薬を使わずに治すことを目的とした理論である。この理論はこれらの病気の構造についての推論と解釈に基づいている。精神分析医を読者と想定して書かれており、一般の読者には難解であり、誤読の危険性がある。したがって、Kurikiメソッドは患者が最寄りの精神分析医により治療を受けること、患者とKurikiメソッドの間には常に精神分析医が存在することを前提とする。感情的カタルシスの爆発は強い影響を伴うため、一週間に一度、三秒間のみの実施であり、そのペースを超えた場合は過失による一種の事故である。そのような事故による一時的な精神的沈下は感情的カタルシスに関し未熟な精神分析医の責任とする。また、論理的思考力に乏しい患者には、頭の中でのトラウマ・イメージの加害者と現実世界での人物との錯覚的混同による暴力的復讐感情に関して精神分析医による個人的な説明が不足してはならない。

 

薬を使わないトゥレット症候群(チック症)と強迫性障害の治療
§38

 

トゥレット症候群と自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラムという語は定義域の名称であり、この定義域における症状の総称が広汎性発達障害である。したがって、自閉症スペクトラム障害と広汎性発達障害は同義語である。ADHDと学習障害は自閉症スペクトラムには含まれない。ADHDと学習障害と広汎性発達障害をいっしょにして発達障害と呼ぶ。自閉症スペクトラムは程度がゼロである健常状態も含み、人により千差万別であり、さらにADHDの要素や学習障害の要素が広汎性発達障害に加わることもある。人間の顔のように、実際の症状の状態は患者の数だけ種類がある。
Kurikiメソッドでは、神経症を二重の構造として理解する。その上層部を身体的な抑圧の仕組みとし、KVと呼びます。KVの先天的な要素と自閉症スペクトラムは統計的に見るならば全く無関係であるとは言えない。「抑圧」という語は Kurikiメソッドでは意識の志向性の機能的条件を広義的に意味する。それは、たとえば、ハーモニカでミの音だけを出すためにはドの穴とソの穴を「抑圧」しなくてはならないということと同じような意味である。ひとつの意識はひとつの対象への意識であり、それ以外の対象は抑圧される。意識そのものは、無意識を抑圧することの産物である。朝、目覚めるときには夢の内容は抑圧される。肩チックなどの運動チックによって、たとえば椅子の硬さが抑圧される。Kurikiメソッドは身体的抑圧の理論である。
トゥレット症候群の患者の一部は自閉症スペクトラム障害の患者の一部でもある。トゥレット症候群は神経症であり、自閉症スペクトラム障害は神経症ではない。チックの動作は常に随意運動であり、自閉症スペクトラム障害の患者のチック症の場合もチックの動作は常に随意運動である。それはロボットの仕掛けのような直接的な反射運動ではなく、チックの動作は常に絶対的な強迫のなかでとても意識的になされる。
「やめろ、なぜそんな動作をするんだ」
「どうしてもしなくちゃならないんだ」
呼吸のように、絶対にしなくてはならない随意運動である。健康な状態で眼球はいつも無意識に動いているが、それに対し、どうしても眼球を動かさなくてはならないという極めて意識的な動きが眼球チックである。汚言症の患者はどうしても「××××」という語を発音しなくてはならない。手拍子チックの患者はどうしても右掌と左掌を正確に強く叩き合わせて音を出さなくてはならない。チックの動作は自閉症スペクトラム障害の直接的な症状ではない。絶対強迫において、チックの動作は随意筋のなかの実際の収縮のない収縮感覚に身体的に強制された意識的な随意運動である。自閉症スペクトラム障害では身体感覚が鋭敏であることがよくあり、身体的不快感覚の抑圧の機能であるKVは自閉症スペクトラム障害の患者にしばしばみられる。チック症の《強迫性筋肉内感覚》は神経症の症状であり、自閉症スペクトラムには含まれない。神経症への傾向のみが先天的な素因に因る。自閉症スペクトラムは各々の患者に先天的に固有であり、チック症が治った場合も自閉症スペクトラムの状態には変化はない。自閉症スペクトラム障害に、しばしば言語化されていないことがらが意識されない状態があるが、感情のかたまりの形成に密接につながる可能性がある。リビドー的に不快な判断や不快な原始的身体感覚が機能的に抑圧される可能性がある。神経症の症状があるアスぺルガー症候群の子供が言語化されていない性器感覚を機能的に抑圧している可能性もある。