辞書、動詞 “Change” の使い方


Change
これは外国語の勉強に関するページです。
日本語では「かえる」「かわる」がそれぞれ他動詞、自動詞となり、さらに漢字の使い分けにより意味がより正確に表されます。意味が曖昧なときは別の単語を使えばそれで済むのですが、このページでは英語の change という動詞と他の外国語のそれに類する動詞のみにこだわってまとめてみます。ここでの他の外国語とは以下の語を指します。
・フランス語 changer、
・イタリア語 cambiare、
・スペイン語 cambiar、
・ドイツ語 ändern, verändern, wechseln.
ドイツ語には change に似た動詞はありませんので、次の語の使い分けの理解になります。
ändern 修正、変更、改善
verändern 変形、変容、一部分の取り替え,
wechseln 二つのものの交換
・ポルトガル語 alterar mudar trocar modificar (ポルトガル語では、cambiar が使われることは稀です。)
日本語で「変」「換」「代」「替」という漢字を使ってしまうと、このページで筆者が言わんとしていることから逸れますので、故意にひらがなを使って「かえる」と書きます。買うことができる、もとの場所に帰る、あるいは両生類のカエルとは無関係です。また名詞 change と他の外国語のそれに類する名詞 cambio など両替を意味するような名詞については、ここでは触れていません。
論題
このページの問題を一言で言うならば、たとえば「アパートをかえる」と言ったとき、次の二つの場合があると言うことです。
・不動産屋に行く場合と
・カーペット屋やペンキ屋に行く場合
不動産屋に行く場合はアパートそれ自体はかわらずに、かわるのは自分なのですが、自動詞と他動詞の区別、前置詞や目的語の数、冠詞などに違いが出てきます。
日本語で「電車をかえる」と言ったときペンキのスプレーを振っている様子を想像する人はいません。しかしながら、もし万が一、悪い人が電車の外見をかえようとする場合でも、「何々をかえる」という語は同じです。このページを読んでいる人は日本人でしょうから、「何々が何々にかわる」「何々を何々にかえる」「何々を何々とかえる」「何々は何々がかわる」などの助詞について筆者がここで説明する必要はありません。日本語においては「彼は顔色をかえた」や「彼は顔色がかわった」という表現に対し、「彼の顔色がかわった」は外国語的な表現と言えます。
change に類する動詞の意味を分類すると次のようになります。
「かわる」の使い方や意味を分類するのは困難であり、そのことが筆者がこのページを作った理由でもあります。
・ひとつのものを捨てて、別なものに関わる。(交換。髭剃りの刃をかえる。)
ゴミ箱に捨てられた刃自体は変化していない。
・直接目的語の様態の変化。(私は髪型をかえる。)
しかし、髪型において「私」がかわると解釈する場合は、主語がかえるのは主語自身です。
・主語の様態の変化。(天候がかわる。気温がかわる。)
筆者がこれを非常に難しいと感じるのは、実例の知識が乏しいからです。ひとつの言語は何万という数の言い回しの集合であり、本来、文法というものは、あとからそれらの共通部分や傾向などをまとめたものであり、したがって、その逆、すなわち先ず文法があり、それに則って言い回しが作られていくのではないからです。ひとつの言語は誰が学ぶかというと、それはその国の小さな子供たちです。彼らは、日常のあるひとつの場面で耳にした言葉を次にそれと同じ場面でそのまま繰り返しているだけなのです。それが言葉の学習の基本です。文法を覚えてそれに単語を当てはめるものではありません。これはこう言う、そうは言わないというのが言葉です。幼稚園の子供が朝、道で保母さんに会ったとき、「先生、おはようございます」と言うのが日本語であり、もしも「おはようございます、先生」と言ったのならば、それでは順序が間違っています。また、「先生、おはようございました」などと間違える子供は絶対にいません。正しい言語というものはしっかりと一字一句、すでに決定しているのであり、数こそ夥しいのですが単純と言えば極めて単純であり、迷いがありません。文法的に迷うのは実例を知らないからです。幼稚園の子供たちは動詞の活用など知りません。「幼稚園に行きます」の「行き」は連用形であるなどとは知りません。
筆者は「かえる」を非常に難しいと感じます。
・たとえば、「話題をかえる」と言うとき、その時の話題という「枠」はひとつであり、その話題の内容をかえるのか、あるいは、話題は「内容」として沢山あり、ひとつの話題をやめて別のひとつの話題を始めるのかということ、つまり話題は単数か複数か、冠詞はどうなるのかというようなこと。
・しばしば、無冠詞単数が正しい場合があります。
・何にかえるかという場合の名詞につく前置詞の選択。
・同質のものとして単に量的変化であり、尚且つ、その質を主語にしない場合。(この会社は従業員の数が頻繁にかわる。会社を主語にする。)
・「直接目的語」のもつ要素を変える場合。(テレビの音量をかえるのだが、「テレビの音量」を直接目的語とせず、「テレビの状態をその音量においてかえる」というような言い方。)
等々。
言語別で大きく分類するよりも、目的語が何であるかによって分類したほうが面白いと思います。

以下、change や cambio などは動詞の一人称現在であり、名詞ではありません。また、change に類する単語 (changer, cambiare, cambiar ) が使えない場合は他のどの単語で表現すればよいかという問題は容易であり、このページの論題から逸れます。(英語のmodify や exchange などに類する語を使うということは容易であり、ここでの問題とはなりません。) ただしドイツ語には change に似た単語がなく、また、ポルトガル語では cambiar は通常使わないのでその限りではありません。
はたして「住所 address をかえる」とは、住処、家などの二つの場所があって、そのひとつから別のひとつへ自分が移動することなのでしょうか。それとも書類の登録欄などでの住所というひとつのことがらの枠において番地の数字、通りの名前、市の名前などが書きかえられることなのでしょうか。家という単語を使わずに、address に類する単語を使った場合。

(下の三つの違いは以下の例によって理解していって下さい。)
I change my address. (v.t.)
I change address. (v.t.)
I change addresses. (v.t.)

Je change d’adresse. (v.t. changer de)

Cambio il mio indirizzo. (v.t.)
Cambio indirizzo. (v.t.)
Cambio indirizzi. (v.t.)
西
Cambio mi dirección. (v.t.)
Cambio dirección. (v.t.)
Cambio direcciones. (v.t.)

Ich ändere meine Adresse. (v.t.)

Mudo o meu endereço. (v.t.)
Mudo endereço. (v.t.)
「私、考えをかえましたのよ。」(旅行をやめる言い訳などとして)
過去に関する時制も興味深いです。

たとえ結果が現在に及んでいても、通常、現在完了にはしません。たとえば「食べた」などもいちいち現在完了にはしないのは多分「食べたことがある」とならないようにするためではないでしょうか。「考えをかえたことがある」という経験が現在に及んでいると解釈される場合、現在完了を使ってしまうと、むしろそれでは今どのような考えであるかが分からないという可能性があります。「お昼を食べたことがありますか」「はい、食べたことがあります」などのような現在完了は使われません。
I changed my mind. (v.t.)

J’ai changé d’avis. (v.t. changer de この avis の前に mon などは絶対に付きません。)

無冠詞
Ho cambiato idea. (v.t.)
Ho cambiato d’idea. (v.t.)
西
自動詞 pretérito perfecto simple
Cambié de idea. (v.t.)

Ich habe meine Meinung geändert. (v.t.)

自動詞の pretérito perfeito simples
Mudei de idéia. (v. t.)
(α) 私はアパートをかえる。(引越し)
(β) 私はアパートをかえる。(カーペット、壁の色などの内装の改良)
(α bis)「アパート(主語)は、かわりましたのよ、オホホッ。」(引越しのあと、「私は今、違う所に住んでいます」の意。)
(β bis) アパートは、かわった。(改装のあとの状態や様子、ただし「内装」などの単語を用いずに言う。)

(α) I change apartment. 無冠詞 (引越し。通常、I move.)
(β) I change my apartment. (内装の改良)
I want to change my wife の意味は彼女の振る舞いや性格などをかえたいということであり、別の女性のほうがいいということではありません。つまり、目的語の無冠詞単数は交換、人称代名詞の所有形は改良を表します。
したがって別のと交換したい場合は、
I want to change wife.
(α bis) なし (引越しのあと「アパートは、かわりました。」)
交換の意味の change は、受動態にはならない。交換は二つのものに関する選択採用の問題なので、交換されたもののそれぞれは、それ自体は交換されていないと言えます。二つのアパートはそれぞれ別個に独立して常に存在しているので、誰が住むかはアパート自身の問題ではありません。たとえば、カメラの電池を交換したとき、英語で「古い電池は交換された」と受動態にすると、古い電池が話の中心となり、古い電池は捨てられてゴミ箱の中で可哀想だという話になってしまいます。新しい電池は悪者になってしまいます。そもそも「交換された電池」と言った場合、それは古い電池のことなのでしょうか、それとも新しい電池のことなのでしょうか。受動態としては、カメラを主語として「カメラは電池を交換された」のほうが好ましいのですが、しかし、「私はアパートをかわられた」とするわけにはいきません。一般的に他動詞は何でも受動態にできそうですが、ひょっとするとへんな受動態になっている可能性もあります。日本語で考えても、自分が引越しをしたことを誰かに告げるときに、受動態で「アパートは、かわられました [換わられました]」は、変です。changed が交換されたという意味で他動詞として受動態で使われる場合には特別な注意が必要です。
(β bis) My apartment has been changed. (ひとつのものの様子がかわった) ここに定冠詞を使うのは間違い。 
英語の冠詞の使い方
どのような状態からどのような状態に改良されたか、あるいは悪化したかは、from 名詞句 to 名詞句を使います。

(α) Je change d’appartement. (v.t. changer de) (引越し)
(β) 私を主語、appartement を目的語とする場合は、内装の改良という意味での changer は使えません。
注意、Je change mon appartement は、contre (または avec, pour) が付いて交換、取り替えの意味になります。
(α bis) 引越しのあと、今、別のアパートに住んでいることをアパートを主語にして言うことはできません。
交換の意味の changer は、通常、受動態にはならない。今は既に捨てられたもの、ゴミ箱の中にあるものを主語にするのならば可。
http://www.tripadvisor.fr/LocationPhotoDirectLink-g187147-d236564-i50548586-TIMHOTEL_Paris_Gare_De_Lyon-Paris_Ile_de_France.html
(β bis) Mon appartement a changé. (ひとつのものの様子がかわった)
すなわち、フランス語においては改良は改良されるものを主語とした目的語のない自動詞のみです。
Mon appartement a été changé. 長期の旅行から帰ってきたら、別の人がテレビを見ながらご飯を食べていて、こちらを振り向いて「どなたですか」と言った。大家さんが「これからは3階の304号に住んでくださいね。家具類は移動済みです。」と言った。= Mon appartement a été changé d’habitant. changer de は自動詞のように見えますが、他動詞です。

(α) Cambio appartamento. (引越し)
Cambio di appartamento. (引越し)
(β) 私を主語、appartamento を目的語とする場合は cambiare は使えません。(内装の改良)。
Cambio il mio appartamento は、contro (または con ) が付いて交換、取り替えの意味になります。過去分詞 cambiato を形容詞的に使った (β bis) の文と衝突します。つまり、Cambio il mio appartamento は引越し、Il mio appartamento è cambiato は内装の改良です。
(α bis) Il mio appartamento è stato cambiato. ただし、受動態なので、やむを得ず、何かの都合で、誰かのした変更によって、別のアパートにいるという極めて特殊な状態。
(β bis) Il mio appartamento è cambiato. (内装の改良)
英語の change のラテン語には cambiare のような語がない。 mutare : commutare : immutare : novare : variare : invertere : permutare
西
(α) Cambio de piso (引越し)
(β) 私を主語、 piso を目的語とする場合は cambiar は使えません。(内装の改良)
Cambio mi piso は、por が付いて交換、取り替えの意味になります。
(α bis) Mi piso es cambiado (引越しのあと、今、別のアパートに住んでいることをアパートを主語にして言う。)
(β bis) Mi piso cambió. Mi piso está cambiado. (様子)
スペイン語の受動態は助動詞は常に ser です。したがって estar のあとの過去分詞は形容詞です。

(α) Ich wechsle das Apartment. (引越し)
(β) Ich verändere mein Apartment. (内装の改良)

cambiar という語は使えません。Trocar は売買などによる、ひとつのアパートと別のアパートその他との交換。
(α) Mudo de apartamento (引越し)
(β) Mudo o meu apartamento. (内装の改良)
(α bis) ”ter mudado de apartamento” (実際の引越しのあとというよりも、条件文や反実仮想などで過去の不定形によってひとつの状態を表す、あるいは「引越しする」という意味で過去の不定形を使う場合が多い。Deviam ter mudado de apartamento. )
自動詞 mudar および、再帰の mudar-se は「引越し」という意味しかありません。
(β bis) O apartamento mudou. (様子)
場所をかえる。
(α) 自分自身が移動する。ただし他動詞。
(β) 物を移動する。
(β bis) 受動態過去あるいは受動態現在完了で、物の配置がかえられた。

(α) I change place. 無冠詞
I would not change places with a king. 複数 places は別の使い方で誰かと立場の交換の意。
(β) 不可能
I change the place of my lamp と言うしかない。
(β bis) 不可能
The place of my lamp has been changed. 電気スタンドが置いてある辺りの様子が変化したという意味になり、電気スタンドの位置が移動したことにはならない。

(α) Metastasis signifie “je change de place” en grec.
(β) Je change de place sur mon bureau la lampe. (la lampe, que … などと関係代名詞で続けることができる。 )
Je change de place la lampe sur mon bureau. (机の上での移動なのか、別の場所からの移動なのかがわからない。自分が机の上に乗って電気の位置をかえていることも文脈により可能。)
(β bis) La lampe a été changée de place sur mon bureau. (v.t. changer de)

(α) Cambio di luogo
(β) 不可能
(β bis) 不可能
西
(α) Cambio de lugar.
(β) 不可能
(β bis) ha sido cambiado de lugar

(α) Ich verschiebe mich.
etc.

(α) Mudo de lugar.
(β) Mudo a luminária de lugar.
(β bis) A luminária foi mudada de lugar.
天気がかわる。

The weather changes.

Le temps change.

Il tempo cambia.
西
El tiempo cambia.

Das Wetter ändert.

O tempo muda.
あなたと席をかわります。
飛行機の中などではもちろんもっと丁寧な言いまわしになります。

I change with you.
(I change the seat with you は間違い。席の色、形をあなたと一緒にかえるという意味にならば I change this seat with you with a knife and marker pens. 席の交換ならば I change seat with you のほうがマシだが、依然として間違い。あなたを椅子として使うという意味になる。I change seat with you. Get down on all fours. )
I change seats with you.  We change seats. は正しい。

Je change de place avec vous.

Cambio di posto con Lei.
西
Cambio de asiento con usted.

Ich wechsle Sitzplätze mit Ihnen.

日本語と同様、実際には「あなた」という語は丁寧語では使わない。
Mudo de assento.
かわりましたね。(年をとった、太った、服装が派手になった、性格に純真さがなくなった、など)
助動詞の違いが興味深い。

You have changed.

Vous avez changé.

È cambiato.
西
Ha cambiado.

Sie haben sich verändert.

Está mudado.
結論
極めて複雑なため、文法的に迷うことではなく、主語や目的語などとともに固定した言いまわしの単位で使うしかありません。とっさに喋るときは、交換する物は無冠詞です。