251 塩水の微分方程式

塩水の問題の微分方程式
1階線型常微分方程式の定番です。

上の図のような大きなタンクに真水が 100 リットル入っています。
タンクの上のパイプからは、塩水が毎分 1 リットルずつ流れ込みます。
また、タンクの底には穴が一つあり、同じく毎分 1 リットルずつタンクの水が外へ流れ出ます。
流れ込む塩水の中には塩が 1 リットルにつき 10 グラムずつ溶けています。
さて、 1 時間後にはタンクの中には何グラムの塩が溶けているでしょうか。
ただし、タンクの中の水はとてもよく混ざるものとします。
こぼれる水の濃度もだんだん濃くなるという問題です。
問題は単純ですが難問です。答は451.188…gになります。
解き方をしっかりと理解していきましょう。
まず、値の単位を整えます。
時間  分
液体の量 cc
塩の量  グラム
タンク内には常に100000 cc 液体が入っている。
パイプからは、濃い塩水が毎分 1000 cc ずつ流れ込む。
穴からは薄い塩水が、同じく毎分 1000 cc ずつ流れ出す。
流れ込む濃い塩水の中には塩が 1000 cc につき 10 g ずつ溶けている。
60 分後のタンク内の塩の量を求める。
まず、入ってくる塩の量だけをみます。

入ってくる塩の量のスピード f ‘(t) = 10
入ってくる塩の60分後の総量 f(60)
今度は出ていく塩の量だけをみます。

出ていく塩の量のスピードg'(t)
出ていく塩の60分後の総量 g(60)

t分後のタンク内の塩の総量 : N(t) = f (t) - g(t)
タンク内の塩の量の増えるスピード :
N'(t) =タンク内に入る塩の量のスピード - タンクから出る塩の量のスピード

タンクから出る塩のスピード      g’ = ?
t分後までに タンクから出た塩水の量 W(t) = 1000t
t分後に於けるタンクから出る塩水の量のスピード W'(t) = 1000
t分後に於けるタンク内の塩水の濃度

濃度をパーセントで表すと 100 倍になってしまうのでこのままにします。
t分後に於けるタンクから出る塩の量のスピード

毎分という表現が既に導関数であることを示しています。

この式から N を計算します。

この形は、1階線型常微分方程式ですので、積分因子を使います。

積分因子の指数の部分には積分定数 C は慣習としてつけません。積分定数 C は原始関数が限定されないことを表しているので不定積分には必ず書かれなくてはいけません。しかし、積分因子の場合は積分定数 C は両辺を ec で割れるので前もって簡略にします。積分因子の指数の部分には積分定数Cは不必要なため昔から慣習として公式にはつけないことになってします。Cは決して任意に無条件で限定されることがないので C = 0 と考えたり、積分因子はひとつを選べばそれで足りるといった考えは、不定積分はそれ自身では絶対的な量としては不定であるという本質を無視した考えです。前もって両辺を ec  で割るというのが積分定数を書かない理由です。とても単純な理由です。