有理数と無理数

有理数と無理数
自然科学が世界に存在する物体を対象とする探求であるのに対し、数学は人間の作った様々な数的な定義の内部での研究である。人間が定義によって決めたものであるため、数学には定義的な疑問はない。たとえ未知であるかのように見えることがらであっても、それは錯覚であり、単に定義されていないということにすぎない。チェスの盤が 8 × 8 であることに疑問をもつことが誤りであるのと同じである。
「はたして数直線は連続しているのか」
このような疑問は誤りである。

無理数 b が数直線上の底なしの穴として定義されれば、底なしの穴 b である。
無理数 b が数直線上の、5 や 13.4 などのような、単なる点であると定義されれば、単なる点 b である。

数学は人間の想像の世界であり、事実に関して正誤を問うものではない。もちろん、神秘的な無理数、ネイピア数を有理数と有理数の隙間の底なしの深淵として想像するのも数学の楽しさと言える。また、数学や物理学の計算は几帳面に見えながら、実際の計算は四捨五入された数値でなされるものでもある。無理数とは、ピタゴラスの定理を基盤とした数の表記がしばしば特別な書き方や記号を必要とするというだけの意味であるようだ。一方、サイン関数の面積が 2 や 4 に収束するように、突如として単純な有理数が現れるのも非常に美しいことである。

ある任意の実数 a が有理数であるか、それとも無理数であるかという区別が計算の方法に影響を与えることはない。分数の形で書けるか書けないかという区別は実質上は不必要である。平方根を除き、いかにも無理数であるように見えるような任意の数 b が無理数であることを証明することは困難である。

たとえば円周率 π が無理数だとしても、そのことを簡潔に証明できないのならば、円周率 π が無理数だと言うのは、もし本当に無理数であったとしても無意味である。

π は無理数である」
「だから、どうした」

定義として実数は有理数と無理数の二種類に分かれる。ところが、実際の計算では、実数は次の三種類に分かれる。
確実に有理数である数
確実に無理数である数
いかにも無理数のように見える数

有理数の集合は無理数の集合に含まれない。すなわち有理数は特殊な無理数ではないのであるが、このことも定義として無意味であるように思える。

問題
c = 0.027027027027…
この循環小数 c を分数を用いて表せ。