平安時代の発音
平安時代に紫式部が日本語をどのように発音していたか。
これはもちろん私の勝手な想像ですので信憑性はゼロですが、下の表は日本語の発音の移り変わりを表しています。実際には、このようにはっきりと区分されるものではないこと、日本全土ではなく、極めて限られた人々だけに関しての話であることは百も承知です。
この表によれば、源氏物語には現代のハ、ヒ、ヘ、ホ、チ、ツの発音、そして棒で伸ばす発音がないということになります。
語中や語末の「はひふへほ」は、ウァ、ウィ、ウゥ、ウェ、ウォですが、w を極端に英語的にする必要はないと思われます。わゐうゑを。
濁音が鼻にかかることを考えると、口をできるだけ閉じたまま、唇を動かさずに発音するような気がします。濁音が鼻にかかることを表記するために、しばしば濁音の前に「ン」を発音するかのように記されますが、濁音の鼻母音化とは「ン」の次に濁音を発音することではないはずです。秋田県などの東北弁に、この鼻母音化があるような気がします。
「ふ」の発音が現在まで生き延びているので、この円い唇の形のまま語頭の「は、ひ、へ、ほ」を発音するのではないでしょうか。語頭の「はひふへほ」は、ふぁ、ふぃ、ふ、ふぇ、ふぉ、になりますが、両唇の間を空気が抜ける柔らかい音であり、英語などの前歯が下唇に当たる F にするのは誤り。つまりハ行のフではなく、ファ行のフ。
「く」を発音するときに口笛のような音がしないようにします。
「さ、す、せ、そ」は、少しシャ、シュ、シェ、ショに近かったはずです。たぶん。
下の表は縦の列がぐにゃぐにゃですが、htmlのtableのfontが面倒なので適当に並べただけです。縦にきれいに並ぶほうがおかしいとも言えるのですが、いんどぅれにせよ、ぐにゃぐにゃの位置には細かな意味はありません。大昔には、語中の「はひふへほ」と「わゐうゑを」はイコールではなかったということになります。
奈良時代 平安時代 室町時代 江戸時代
ヤ行のえ ye e e e
見え奉る ミイエタテマトゥル ミエタテマトゥル
ゐ wi wi i i
ゑ we we e e
を wo o o o
ぢ di di di ジ
づ du du du ズ
ち ti ティ ti ティ チ チ
つ tu トゥ tu トゥ ツ ツ
は 語頭 古代pa 奈良φa φa φa ha ハ
は 語中、語末 古代pa 奈良φa wa wa ha ハ
ひ 語頭 古代pi 奈良φi φi φi hi ヒ
ひ 語中、語末 古代pi 奈良φi wi wa hi ヒ
ふ 語頭 古代pu 奈良φu φu φu φu フ
ふ 語中、語末 古代pu 奈良φu wu wu φu フ
へ 語頭 古代pe 奈良φe φe φe he ヘ
へ 語中、語末 古代pe 奈良φe we we he ヘ
ほ 語頭 古代po 奈良φo φo φo ho ホ
ほ 語中、語末 古代po 奈良φo wo wo ho ホ
さ シャ サ サ サ
す シュ ス ス シ
せ シェ シェ シェ セ
そ ショ ソ ソ ソ
おう オウ オウ オー オー
あう アウ アウ オー オー
えい エイ エイ エイ エー