ドイツ語文法 derselbe


ドイツ語文法 derselbe

Nom. derselbe dieselbe dasselbe dieselben
Gen. desselben derselben desselben derselben
Dat. demselben derselben demselben denselben
Akk. denselben dieselbe dasselbe dieselben

現代のドイツ語では、そのもの自体でなくても、二人の子供が食べているそれぞれのチョコレートが同じ製品であったり、二人の男がそれぞれ所有している自動車が、たとえ色違いであっても同じの機種であるならば使われる指示代名詞。学校のテストなどでは、森鴎外時代のドイツ語の文法の可能性があるので、同じそのもの自体に関して使われる語としないとバツになるかもしれない。工場で生産された全く同じ製品というような意味は、昔のドイツ語にはなかったのであろう。

gleich と derselbe との違い。
日本語で「同じ物」と訳したりするから混同するのであり、ドイツ語のままで考えるならば全く違う語である。
gleich は形容詞。ものの大きさ、色、値段、強度など、属性について表現する。二匹の同じような色かたちの犬など。「なんだ、ほとんど同じじゃねえか」と言えるような物について用いられる。
derselbe は代名詞。前出の名詞とのあいだに時間的なズレのニュアンス、「今度は、それは」、「今度は、それの」、「今度は、それに」、「今度は、それを」のような気持ちがあるように私には感じられるのであるが、参考書などにはそのことは載っていないようである。
derselbe は冠詞プラス形容詞と考えれば簡単そうに見えるが、代名詞なので単独でも使われ、特別な慣れが必要。
(私は実は指示代名詞 derselbe の前半の der は短いほうの指示代名詞の der であると思っているのであるが、そのようなことが書いてある参考書もなく、私が勝手に、恐らく間違えて、考えているだけであろう。)

derselbe の大切なところ
derselbe の大切なところは、これは冠詞と形容詞を一緒にしているのとは違うということ。derselbe は指示代名詞、つまり名詞である。形容詞みたいなものだなどと思ったら大間違い。後ろの名詞を修飾するのではなく、単独で使われるあたりを観察すべきである。文章の中で前出の名詞を不必要に繰り返さないための代名詞として、それは、それの、それに、それを、のように単独でも使われる。すぐ前に出ている名詞の代わりをする。形容詞が名詞を修飾するためにあるのに対し、指示代名詞は名詞の繰り返しを回避するためにある。森鴎外は舞姫を殺そうと毒饅頭を丸め、皿に乗せ、台所のテーブルに置いておいた。ところが彼は翌日、自分でうっかりそれを食べてしまった。「大変だ、医者を呼べ。医者を。」動顛した彼は、自分がそれであることをすっかり忘れていた。
derselbe は指示形容詞ではなく、指示代名詞。単独で使われるときのほうが本来の機能であるとも言える。しばしば、2格を名詞の後ろにつけて「それの = von ihm」として使われる。
Nichts zeugt so sehr von kleinlicher und engherziger Gesinnung als die Liebe zum Reichtum, nichts ist edler und großartiger als die Geringschätzung des Geldes, wenn man es nicht besitzt, und die Verwendung desselben zu wohltätigen und menschenfreundlichen Zwecken, wenn man es besitzt. (キケローのラテン語文を誰かがドイツ語訳したもの)